地震保険の損害認定基準
地震保険の損害認定基準をきちんと理解しよう
地震保険は、損害を受けた建物や家財の損害の程度により、支払われる保険金が決まっています。
なお、損害の程度は「全損」「半損」「一部損」の3」種類になり、その認定は「地震保険損害認定基準」に基づき建物と家財を別々に認定します。
なお、地震保険の損害認定は、地震被災後の建物の判定を行う「被災建築物応急危険度判定」、「被災度区分判定」、「り災証明」とはリンクしていません。認定内容も異なりますので、それらとは別に損害認定を受ける必要があります。
ここでは、「地震保険損害認定基準」に基づき、建物と家財の損害認定についてご紹介します。
木造建物
在来軸組構造の建物は以下のような主要構造部に着目して損害程度を調査します。
軸組・・・柱
基礎・・・布コンクリート
屋根・・・屋根面
外壁・・・外壁面
枠組壁工法については、以下の主要構造部に着目します。
外壁・・・1階の外壁面
内壁・・・1階の入隅部
基礎・・・布コンクリート
屋根・・・屋根面
次に、損害認定基準から物理的な損傷割合と回数(平屋建て、2階建て、3階建て)ごとに定められた損害割合、地盤に損害がある場合はその損害も合算し、以下のように認定を行います。
全損・・・損害割合50%以上
半損・・・損害割合20%以上~50%未満
一部損・・・損害割合3%以上~20%未満
支払対象外・・・3%未満
損害認定基準では、在来軸組工法の建物は、地震の震動による基礎の傾斜が約3度を超えたときや、柱の傾斜角が3度以上、柱の沈下・柱の断面積が1/3以上の欠損があるもの、柱の折損等が、建物全体の柱の本数を40%以上を超える場合は全損となります。
枠組工法の建物は、地震の震動による基礎の傾斜が約3度を超えた場合や、外壁の傾斜角が1度以上・外壁表面に亀裂、破断があるもの・外壁面および壁の継ぎ目に亀裂、剥落、破損、張り立て面の目地切れ等があり、補修を要するものの割合が、1階の外周延べ長さの25%を超えた場合は全損となります。
また、軸組、基礎、屋根、外壁。内壁といった主要構造部に損害がなくても、内壁、床組に物理的な損傷があるときや、より詳細な調査を要するときは第2次査定を実施し、それらの損傷割合も合算され、全体の損害割合を求める場合もあります。
鉄筋コンクリート造
鉄筋コンクリート造(ラーメン構造)の建物は、まず建物全体の沈下または傾斜による被害の程度を調査し、損害割合を求めることになります。
鉄筋コンクリート造の損害認定基準では、沈下または傾斜による損害割合が50%以上の場合は全損となります。
建物全体に沈下、傾斜がない場合や沈下、傾斜よる損害割合が50%に至らない場合、損傷の最も大きい階の柱や梁といった部分的被害に着目し、沈下、傾斜による損害割合と部分的被害の損害割合を合算して損害割合を求めます。
例外的に建物の沈下を伴わない傾斜(部分傾斜)がある場合は、部分傾斜による被害と部分的被害のいずれか高い値を全体の損害割合とします。
鉄筋コンクリート造の損害認定基準では、最大沈下量が100cmを超える場合や、傾斜が約1.2度を超える場合、建物全体が1階で総崩壊しているとき、平面的に建物の1/4以上の部分で倒壊しているときは全損となります。
鉄骨造の建物
鉄骨造の建物は、鉄筋コンクリート造の建物同様、まずは建物全体の沈下または傾斜による被害の程度を調査し、損害認定基準から損害割合を求めます。
建物全体に沈下、傾斜がない場合や、沈下または傾斜による損害割合が全損に至らなかった場合は、建物各階の開口部、外壁といった部分的被害に着目し、沈下、傾斜による損害割合と開口部、外壁のどちらか高い値の部分的被害の損害割合を合算して損害割合を求めます。
鉄骨造の損害認定基準では、地震による振動(地盤の液状化は除く)最大沈下量が40cmを超えている場合、傾斜が約1.7度を超えるとき、平面的に建物の1/4以上の部分で倒壊しているとき、外壁の種類により「はらみ出し」または「剥落」、「局部破壊」または「崩落」している外壁の被害が建物全体の外壁の50%を超える場合は全損となります。
なお、建物の損害認定基準はあくまでも主要構造部の損害に着目されるため、ガラスの破損や給排水管の損傷、水ぬれなどの損害は一切加味されません。
地盤の液状化による建物損害
東日本大震災では関東各地で地盤の液状化現象が発生し、多くの建物に損害が発生しました。そこで、これまで採用していた地震振動による損害認定方法に加え、液状化特有の損害に着目した損害認定方法が基準に追加されました。
木造建物(在来軸組工法、枠組壁工法)と鉄骨造建物(共同住宅を除く)は、傾斜が1度を超えるときや沈下が30cmを超える場合は全損、傾斜が0.5度以上1度以下の場合や沈下が15以上30cm以下の場合は半損、傾斜が0.2度を超え0.5度以下の場合や沈下が10cm以上15cm以下の場合が一部損となります。
傾斜、最大沈下量はいずれか高い方が採用されます。
なお、建物の傾斜約1度あると生理的な限界値を超えるといわれています。
家財の場合
家財の損害認定基準は、個々の家財の損傷程度によらず、あらかじめ5つに分類された家財の代表品目の構成割合と損傷品目数から求められた損害率をもとに損害割合が求められ、以下の認定を行います。
全損・・・損害割合80%以上
半損・・・損害割合30%以上~80%未満
一部損・・・(損害割合10以上~30%未満
支払対象外(損害割合10%未満)
家財の損害認定における5分類は以下の通りになります。
食器陶器類
電気器具類
家具類
身回り品その他
衣類寝具類