地下室のある注文住宅
地下室のある注文住宅
注文住宅を建てる際、限られた敷地の面積をより有効に活用したい場合に検討されるのが、地下室です。
ただし、地下室をつくるにはクリアすべき建築基準法の細かな定義があり、メリットとデメリットもあるので、それをしっかりと把握しておく必要があります。
地下室とは
建築基準法では地下室のことを「地階」と呼び、地階の床が地盤面よりも下にあり、地階の床から地盤面の高さが地階の天井高の1/3以上の部屋と定めています。
地下室を居室として使用するときの法律上の制限
かつては地下室を居室として使用することは建築基準法で禁止されていましたが、現在は一定の条件を満たしていれば、地下室を居室として使用することが認められています。
この場合、構造耐力上安全であることを大前提として、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
・ドライエリア(からぼり)に面する開口部が設けられている
・換気設備が設けられている
・湿度を調節する設備が設けられている
・防水措置が講じられている
その他、地下室は敷地や道路の広さ等の周辺の状況によっては工事の難易度が高いため、十分な安全対策が求められます。
地下室のメリット
①容積率の緩和
すべての建物は、本来であれば建築基準法で決められた面積(容積率)までしかつくることはできませんが、地下室は延べ床面積(地階、地上階すべての床面積を足したもの)の1/3を上限に、面積にカウントしなくても良いことが建築基準法で定められています。
この緩和を受けるためには、建築基準法で定められている地階の定義に適っている、かつ地階の天井高さと地盤面の差が1メートル以内である必要があります。
②高い遮音性
地下室は周りを土に囲まれたスペースになります。土は遮音性・吸音性に優れているため、外部からの音だけでなく内部の音を遮断する効果があります。そのため、シアタールームや音楽室として良く地下室がつくられています。
③温度変化が少ない
地中にある地下室は、年間を通じて地上に比べ温度変化が少ないため、貯蔵庫として使われるケースもあります。
地下室のデメリット
①割高な建築コスト
地下室をつくるためには、土を掘削、処分するための費用や、土が崩れないように山留め工事をする費用などが必要になります。
さらに地下室は土圧に耐えられる強度の鉄筋コンクリート造になるため、少なくとも坪単価は120万円~150万円になるのが一般的です。
また、地下室にバスルームや洗面台などの水まわり設備を設置するには特別な設備工事が必要なため、さらにコストはアップします。
地下室の形状や使用する工法は、敷地形状や地盤、地下水位の状況で異なります。
複数の会社から地下室の見積もりをとる場合、会社ごとで価格にかなりの開きがあることがありますが、これは結露や湿気対策、大雨や洪水時のリスクの見立てが設計や仕様の違いに現れた結果ですので、価格の安さだけに囚われず、設計や仕様を十分に確認して業者を選定することが重要です。
②結露や湿気
土の中は常に高湿度の状態ですので、土の中に埋められた地下室では換気対策やドライエリアを設置する等の対策をとらないと、結露やカビが発生する恐れがあります。雨期は特に注意が必要です。
また、コンクリートが完全に乾燥するまでには数年かかりますので、新築後の数年間は強制換気などの除湿設備が必要になります。
湿気対策のために「土に面する外側の壁」と「室内に面する内側の壁」を二重に作る場合がありますが、二重壁にした場合は地上に鉄筋コンクリートの壁を作る倍近くのコストが掛かることもあります。
③大雨や洪水時のリスク
大雨や洪水で水位が上がると、地下室に水が流れ込んで来たり、地下室のトイレやバスルーム等に下水が逆流する危険性があります。
対策としては、階段をつけて地下室の玄関を道路面より高くしたり、地下駐車場には止水板を設けた方がいいでしょう。また、自然排水ができない場合は機械的なポンプアップ処理を考えた方が安心です。