将来の売却を視野に入れた注文住宅づくり
売却しやすい注文住宅の条件は
注文住宅をこれから建てようとしているとき、将来の売却まで考慮してプランをつくる人は少数派だと思います。
しかし、生活環境の変化などで将来的に住宅の売却を検討しなければいけないケースもないとは限りません。
子供の独立、親との同居などで家族構成が変化する、あるいは転勤や転職で仕事の環境が変化して、住宅とライフスタイルがマッチしなくなり、実際に多くの人が住宅を手放しています。
自分で住宅を売却するケース以外に、自身が亡くなった後に家を相続した子供が、使わないため売却しようとするケースもあります。
最近、テレビでも空き家問題がよく取り上げられますが、相続した家を売却できず、そのまま放置するしかないと困っている人は意外と多いのです。
将来、自分や子供が家を売却しようと考えたとき、なかなか売れないというリスクを回避するためにも、売却ということを念頭に入れて家を建てるという視点は重要なポイントになるはずです。
以上のことを踏まえ、売却しやすい注文住宅の条件を、立地条件と建物の状態に焦点をあてて解説したいと思います。
立地条件
住宅が売れやすくなる1番のポイントは立地条件です。
こういっては何ですが、立地条件が購入者の希望を満たしていれば、その上に建つ建物の状態がどうであれ、売却できる可能性は高くなります。
立地条件は基本的に手を加えることはできませんが、建物は気に入らなければ取り壊して建て直せばいいだけの話だからです。
そもそも日本の住まいは築25年を過ぎると資産価値は基本的に失われることがほとんどです。当然、住宅の売却においても、建物本体より立地条件が重視されることが多くなります。
人それぞれで希望する立地条件は異なりますが、一般的には以下の点が重要だとされています。
1.社会インフラが整備されている
高度成長期に整備された社会インフラの老朽家が進んでいます。それらの維持・メンテナンスには莫大な費用がかかることもあり、自治体単位での対応はどんどん難しくなっています。
このまま老朽化が進めば、電気や水道、ガスが行き渡らない地域も出てきますし、道路や橋の整備も追いつかなくなります。
さらに、学校や病院などの施設、公共の交通機関など、家族の生活を支える社会インフラも、過疎化が進む地域では整わないケースも出てくる可能性があります。
こうした背景もあり、コンパクトシティー構想に従ってなるべくまとまった地域に移り住んでもらうよう呼びかける自治体もあるようです。
いずれにしても、住宅を売却することを考慮した場合、将来にわたって最低限の社会インフラが整備される見込みのある地域でなければ、売却が難しくなることは確実です。
自分が所有している土地はもちろん、親から譲り受けた土地であっても、将来の社会インフラに不安がある土地であれば、注文住宅を建てることは避けたほうが無難でしょう。
社会インフラに不安がある土地を持っている場合、その土地の売却も将来的に難しくなると思います。もしそうした土地を持っているなら、早めに売却を考えたほうがいいかもしれません。
2.良好な周辺環境
何をもって周辺環境の良し悪しを判断するかは人によって異なりますが、一般的に受け入れられやすい周辺環境であれば、売却しやすくなるはずです。
まずは、その土地が災害の起こりやすい地域ではないことを確認しましょう。
洪水や土砂崩れなどの水害が起こりやすい地域、地震による被害が多い土地であるかは、自治体の災害予想マップで確認できます。
また、騒音の問題がある土地もオススメしません。交通量の多い幹線道路沿い、線路沿い、騒音を撒き散らす古城から近い土地は、マイナス評価を受けやすい土地といえます。
インフラが整っているかも重要なポイントです。学校や病院、ショッピングモールの有無や距離など、日常生活を送る際に利便性も、土地の売れやすさに大きく影響するポイントです。
発展性のある地域かどうか
地域に発展性があるかは必須条件ではありませんが、できれば発展が望める地域であることがベターです。
経済の低成長が続くとみられている今の日本では、今後の発展が見込める地域はレアな存在であり、その地域にある土地であれば、売れやすいだけではなく地価が上がり、より高い金額での売却が望めます。
ただし、全国的に地価が下がり続けている現状を考えれば、そういった土地は一部の都市圏でしか見つからないかもしれません。
地盤に問題ないか
土地の地盤に問題があるかどうかは、購入前に完全に把握することはできません。過去に水害が起こっている地域の地盤は軟弱なことは予想できるのですが、基本的には災害マップなどから推測するしかありません。
どちらにしても、推測だけで図れることではないので、実際に地盤調査をしてみないと答えは得られません。
地盤に問題があれば地盤改良工事の費用がかかりますが、事前に分かることではないので仕方のないことだと割り切ってください。
建物の状態
住宅の売却では土地条件が最重要視されることは間違いありませんが、住宅の条件も売却のしやすさに当然影響します。
土地だけでなく、中古住宅にそのまま移り住みたい人にとって、以下のようなポイントが重要になります。
1.メンテナンスが行き届いているか
メンテンナスが行き届いているかは、中古住宅を探している人にとって最も重要なポイントになります。
メンテンナスの良し悪しで、エクステエリアやインテリア、設備の痛み、経年劣化の進み具合などが大きく変わってきます。
特に見栄えは、住宅を売却できるかどうかに大きな影響を与える重要なポイントです。
中古住宅を探している人にとって、見た目の第一印象は見逃せない要素です。ここでNGと感じられてしまうと、ほかの条件が良くてもなかなか挽回できないでしょう。
日本は中古住宅の売買件数はまだまだ少ないですが、中古住宅を購入する人は年々増えており、今後も増加が予想されます。
注文住宅を将来的に注文住宅として売却したいのであれば、資産価値を維持するためのメンテナンスに力を入れるべきだと思います。
また、売却の可能性が少しでもあるのなら、一般的に受け入れにくい奇抜なデザインは避けたほうが無難です。
売却のしやすさを考えたとき大きなマイナス要素になってしまいます。
住宅性能が高い
いわゆる高性能住宅も売りやすい住宅といえます。ブランド力という面で考えた場合は、大手のハウスメーカーや有名な建築家が設計した住宅の評価が高くなる傾向にあり、買い手も付きやすいでしょう。
また、近年では住宅自体の性能を評価する制度もあります。これらの制度で高評価の住宅も売りやすい住宅といえます。
・住宅性能表示制度
・長期優良住宅
住宅性能表示制度は、設計の施工の観点から第三者機関が住宅性能を評価する制度で、長期優良住宅はメンテナンス計画を立てることで長持ちする住宅として行政庁から認定された住宅を指します。
どちらの制度も任意なので、こうした評価を得ている住宅ほど評価が高いと判断され、将来的に売却しやすい住宅になります。
増改築のしやすさ
買い手のライフスタイルによりますが、そのままの状態で移り住むのではなく、増改築したうえで住みたいという要望がでる可能性もあります。
この場合、増改築がしやすい住宅であれば売却の可能性が高まります。
木造軸組工法などの在来工法で建てられた住宅は増改築がしやすいのですが、ツーバイフォー工法で建てた住宅は増改築がしにくいという特徴があります。
売却を見据えて家づくりをするときは、どんな工法を用いて建築するかも慎重に検討する必要があるといえます。
違法建築でないことが大前提
欠陥住宅が売れないのは当然として、違法建築の家も売れない住宅となります。
建築確認申請が通ってから屋根裏を改造して部屋にしているなど、世の中には意外と多くの違法建築住宅があります。
そうした住宅を売却する際には、重要事項説明として違法建築物であることを買い手に説明しなければいけません。当然、それを聞いて積極的に購入したいと考える買い手もほとんどいないでしょう。
まとめ
ここまで注文住宅を売却しやすくなる条件を紹介しましたが、基本的にこれらの条件を良くすればするほど住宅にかかる費用が高くなるため、どこで予算の折り合いを付けるかの判断は難しくなります。
ただ、将来の売りやすさは家づくりの重要なポイントになるのは間違いありません。
注文住宅の資金計画を立てるときは、このことも考慮して十分に計画を練ることを強くオススメします。