傾斜地に注文住宅を建てるリスクとデメリット
傾斜地に注文住宅を建てることで生じるリスク
傾斜地に注文住宅を建てるのは、それだけでリスクがあるということは理解しておいてください。
・擁壁の劣化速度が早い
・地盤の強度に不安がある
・崩落や土地ずれの可能性
・道路より土地が低い
・建物に悪影響がある
このように傾斜地にはさまざまなデメリットがあります。あえてメリットを挙げるなら景観の良さでしょうか。
特に南側に向かって下がっている傾斜地なら、周辺の環境次第で1階部分も採光に優れた明るい住宅が建てられます。
ただ、それだけの理由で傾斜地に注文住宅を建築するのはおすすめしません。
今から紹介するデメリットを考慮したうえで、慎重に検討してください。
傾斜地にある擁壁(ようへき)が抱えるリスク
擁壁とは、地盤の崩落を防ぐために、コンクリートブロックや石などを使って建造する壁上の建造物です。
傾斜地に住宅を建てるときは、擁壁(ようへき)を構築して地盤を安定させ、その上に建物を建築するケースが多くなります。
また、もともと擁壁が構築されている土地の上に住宅を建築することもあります。
1.擁壁の劣化によるリスク
擁壁の劣化が進むと、一部が崩壊することもあります。今のところは件数があまりなく、それほど話題になっていませんが、古い擁壁が増えているので今後は問題となると思われます。
擁壁が壊れたとき、建物本体にダメージが及ぶことは十分に考えられます。また、擁壁の損傷箇所を復旧するのにかかるコストは莫大になることも覚えておいてください。
2.安全性の確認が困難
擁壁が古くなったとき、安全性を確認したいところですが、実際のところ非常に難しくなります。
擁壁内部の構造・状態を把握することは困難です。基本的には目視など簡易的な確認に留まるでしょう。
3.擁壁が2メートルを超えると建築確認申請が必要
建築予定地の擁壁の高さが2メートルを超えている場合、その上に住宅を建築する際には建築確認申請が必要になります。
つまり、擁壁を構築してから完了検査を受けているということなので、一定の安全性は確保されているということです。
万が一、高さが2メートルを超えているのに建築確認申請がされていないと問題なので、必ず検査済証を確認してください。
高さが2メートル以下の擁壁であれば建築確認申請は必要ありません。しかし、低いから安全かと聞かれると、決してそうとは言い切れないのです。
単純に高さだけ比較すれば、低いほうが安全であることは間違いありませんが、それを逆手に安全性の低い擁壁が構築されている可能性も否定できません。
1メートルで検査がされていない擁壁より、2メートル以上でも検査を受けた擁壁のほうが、安全性が優れているという見方ができます。
4.目視でできる擁壁のチェック
擁壁の状態を目視で確認するとき、特に注意して見ておきたいポイントは以下の3点です。
・大きなひび割れの有無
・水抜き穴の有無
・排水溝の有無
大きなひび割れがある擁壁は、安全性で大きな不安が残ります。
水抜き穴が適切に設置されているかも大切です。水抜き穴は地中の水を抜くために設けられます。これがないと地中の水分量が増え、擁壁の劣化や地盤の沈下を招く恐れがあります。
擁壁の下側にある排水溝は、水抜き穴などから流れてきた水を排水するために設置されるものです。排水溝がないと、自宅より高い場所から流れてきた水が敷地内に流れ込むことがあります。
傾斜地の地盤が抱えるリスク
家を建てるときは、地盤調査が必ずおこなわれますが、傾斜地にある土地の地盤では、調査する想定点によって結果が大きく異なることがあります。
もともとそんな地盤であった可能性もありますが、傾斜地で宅地をつくるときは切土と盛土による宅地造成がおこなわれます。
切土部分はもともとあった地盤なので比較的安定していますが、あとから盛土を使って造成された部分の地盤は軟弱であることが多くなります。
切土部分と盛土部分どちらの上に住宅を建築するかで、安全性に大きな差が生じるということは覚えておきましょう。
傾斜の崩落・地面ずれのリスクが
急な傾斜地が住宅の近くになる場合、その傾斜地の崩落が心配です。崩落のほか、地滑りや土石流も含めて土砂災害といいます。
土砂災害のおそれがある区域は、各自治体が土砂災害警戒区域または土砂災害特別計画区域に指定されています。
これに該当する区域であるかどうかは、各自治体のホームページで簡単に確認できるので、傾斜地で土地を探す際は必ず確認してください。
傾斜地では土砂災害のほか、土地のずれの問題も生じます。傾斜地に住宅を建築すると、高い方から低い方に圧力がかかるため、徐々に地面がずれる可能性があるのです。
このずれによって、基礎や外壁にひび割れが生じるケースもあります。
道路より低い地面が抱えるデメリット
傾斜地の住宅地でよく見られるのが、道路より敷地の低い住宅です。このような地面に住宅を建てると、さまざまなデメリットが生まれます。
激しい雨が降ると敷地内にどんどん雨水が流れ込んできてしまいます。さらに敷地内に流れ込んだ雨水は外へ流れ出にくいため、建物に床下に水が流れ込む危険があります。
また、水はけが悪いと地面が常に湿った状態になり、カビが発生しやすいというデメリットもあります。
道路より低い土地に住宅を建てるのなら、その土地の排水計画が適切かをしっかり確認する必要があります。
建物本体に与える影響
宅地として不適切な土地に住宅を建てると、さまざまな問題が生じることがあります。
購入した土地に既存の建物が残っているなら、その建物の状態を調べることで将来的にどんなリスクがあるか推測できます。
1.基礎・外壁・内壁のひび割れ確認
建物が受けた影響で1番確認しやすいのが、基礎や外壁、内壁に生じるひび割れです。
ひび割れがあるからといって、その全てが傾斜や地盤と関係しているとはいえませんが、その可能性を考慮して対策を検討しておいたほうがいいでしょう。
ひび割れは表面だけ補修しても、内部で拡大することもあるため、再発や悪化の危険性があります。
ひび割れが見つかった場合、それに対する対策は必須と考えてください。
2.床・壁の傾き確認
室内の床や壁に傾きがないかの確認をしましょう。壁の傾きを確認する方法としておすすめなのが、壁際に置いてある家具と壁の隙間を、家具の上と下で確認する方法です。
また、床の傾きもしっかり確認しておきたいところです。
ちなみに、体感や目視で傾きが分かるようなら、かなり大きく傾いていると考えられるので、専門家へ必ず相談してください。
家の傾きは吐き気やめまいなど健康面に影響を及ぼしますので、必ず確認しておきましょう。
3.周辺の建物や外構確認
建物本体のほか、塀や門扉など外構部分もチェックしてみましょう。塀にひび割れがあったり、門扉の噛み合わせが悪かったりした場合、傾斜地であることと関係があるかもしれません。
購入を検討している土地が更地だったときは、隣家や近くの住宅の状態を確認することで、あなたが住宅を建てようとしている傾斜地の状態を推測することができます。